※このブログでは、大いにネタバレがあります。まだ読んでない人はご注意ください。
水滸伝の中で、最も印象深い人物ではなかろうか。
北方水滸伝において、1巻から登場する。
最初は自分は志のために生きている。それ以外を気にしている暇はない。
という思いで生きていた。しかし罠にはめられ、結果、妻を殺されてしまう。
そこで初めて、自分が妻を愛していたことを気づいた。
そこから苦悩を抱えながら、生きていくのである。
武術、リーダーシップ、調練の方法など、抜群の力を持っている。
また常に単独、または少数精鋭で最前線で戦い、戦火を上げていく。
しかしそれの根源は常に危さから来ている。
なぜなら、常に死に場所を探しているから。
妻を自分が殺してしまったことへの後悔、懺悔を抱えながら生きているからだ。
最終的に、一人の女性を救って死んでしまう。
が、死に場所を求めていなければ、生き残れたのではなかろうか。
しかし、死に場所を求めていなければ、それほど活躍はできなかったのかもしれない。
突き詰めれば、ただの小説だし、そんなことを考えても無駄かもしれない。
ただ自分は一読者として、もう少し彼の生き様を見ていたかった。
しかし死ぬタイミングとして、完璧だった。
なぜなら、楊令が出てきたからだ。
自分の役割、騎馬隊を受け継ぐ者として、完璧な人物が出てきた。
それで安心してしまった部分もあるのかもしれない。
自分が死んだら、誰がこの騎馬隊を率いるのだ。
自分を置いて、誰が疾風のごとく、真っ先に激戦地へ駆けつけ、敵を蹴散らすのだ。
という気持ちがあったかもしれない。
それが後を継ぐ者が出てきてしまった。安心してしまった。
そこへ彼の背負っていた因果、死に場所を求める習性が出てしまった。
しかも女性を助けるというわかりやすい形が目の前に出てきてしまった。
そのため、自ら、その死に場所に飛び込んでしまった。
そういうことではないだろうか。
自分の中で、水滸伝中、最も雄々しく、心を惹かれた人物、林冲。
安らかに眠って頂きたい。そして夢の中で、素直になり、妻に優しくして頂きたい。